空き家の固定資産税6倍はいつから?特定空き家に加え管理不全空き家も対象

「空き家は固定資産税が6倍になる」と聞くと、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、すべての空き家で税金が上がるわけではありません。固定資産税の増額を防ぐには、空き家を正しく管理することが大切です。
この記事では、固定資産税が上がってしまう空き家の条件に加え、いつから6倍になるのかといった点まで詳しく解説します。最近空き家を相続した方や、空き家管理にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

空き家の固定資産税6倍の概要と背景

空き家の固定資産税が6倍に上がる背景には、以下の3つの要素があります。

  • 空家対策特別措置法の改正
  • 固定資産税の住宅用地特例の適用除外
  • 空き家問題の深刻化と行政の対応

大まかにまとめると、法改正・税制・空き家の社会問題化が影響していると言えるでしょう。
次の項から一つずつ解説していきます。

空家対策特別措置法の改正

2023年12月13日に、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空家対策特別措置法)とは、2015年に制定された、空き家問題の解決を目的とした法律です。従来の空家対策特別措置法においては、「特定空家」を「固定資産税等の住宅用地特例」の適用対象外とすることで、空き家の活用促進を図ってきました。しかし、2023年の改正で、新たに「管理不全空家」も住宅用地特例の適用対象外に加わったのです。すなわち、法改正によって固定資産税が増額される空家の範囲が拡大したということになります。

固定資産税の住宅用地特例の適用除外

固定資産税は、通常「固定資産税評価額×1.4%」の数式で算出されます。
ただし、その土地が住宅用地(住居として活用される建物がある土地のこと)である場合、以下のように減税されるのが特徴です。

住宅規模軽減率
小規模住宅用地(200㎡以下)固定資産税評価額×1/6
一般住宅用地(200㎡超)固定資産税評価額×1/3

たとえば、「評価額1,500万円の土地(200㎡以下)」だとすると、
1,500万円×1/6×1.4%=3.5万
すなわち3.5万円が土地に対して発生する年間の固定資産税となります。


しかし、「特定空家」および「管理不全空家」のある土地は、住宅用地特例が適用されません。
したがって、先の条件と同様に計算した場合、
1,500万円×1.4%=21万円
となり、土地の面積に応じて最大6倍まで固定資産税が増額されてしまうのです。

空き家問題の深刻化と行政の対応

日本国内における空き家の総数は増加の一途を辿り、この20年で576万戸から849万戸と約1.5倍に膨れ上がっています。また、その内の約4割が「居住目的のない空き家」であることも明らかにされました。
居住者がおらず放置された空き家は、老朽化による崩落・倒壊のおそれや、地域の景観・治安への影響が考えられることから、早急に処置をしなければなりません。
したがって、空き家の除去、および利活用を促進する制度が全国的に広がりつつあります。空き家の固定資産税が上がる背景には、このような社会問題の深刻化も要因としてあるのです。

参考:国土交通省 住宅局『空き家対策小委員会 とりまとめ 参考データ集

空き家の固定資産税6倍が適用される条件とは?

空き家の固定資産税が最大6倍まで上がるケースは以下の2つです。

  • 特定空家に指定される場合
  • 管理不全空家に指定される場合

ここではそれぞれのケースについて解説します。

ご自身の所有する空き家が条件に該当しないか、チェックしておきましょう。

特定空家に指定される場合

国土交通省が規定する「特定空家」の条件は以下の通りです。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれがある
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である

参考:国土交通省『管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)


原則として、外観・機能ともに明らかな問題がある古い空き家は「特定空家」に該当すると考えてよいでしょう。

【2023年改正】管理不全空家に指定される場合

2023年の法改正に伴い、新たに「管理不全空家」が住宅用地特例の適用対象外として追加されました。管理不全空家には、「適切な管理がされていないことにより将来的に特定空家となるおそれがある空家」が該当します。
特定空家のように明確な基準が定められておらず、自治体によって判断が異なる点が特徴と言えるでしょう。一例として、滋賀県草津市では「管理不全空家等判定表」を作成し、評点数に応じて管理不全空家の判定を行っています。主な調査項目としては、家屋や外構の状態、敷地内の清掃や修繕状況などが挙げられます。有する空き家が管理不全空き家に該当するかどうかは、自治体に問い合わせるのが確実です。

参考:滋賀県草津市『草津市管理不全空家等および特定空家等判断基準(素案)

固定資産税6倍が空き家所有者に与える影響

固定資産税が6倍にもなると、空き家所有者に及ぼす負担や影響も大きくなります。

具体的には、以下の3つが挙げられます。

  • 経済的負担の増加
  • 空き家管理の重要性の高まり
  • 不動産価値への影響

ここでは、住宅用地特例が適用されない空き家を所有するリスクについておさえておきましょう。

経済的負担の増加

固定資産税の増額によって、空き家所有者が負う経済的負担も増加します。住宅用地特例によって年間7万円に減税されていた土地でも、最大42万円まで上がる可能性があると考えれば負担の大きさがイメージしやすいでしょう。固定資産税は、不動産を所有する限り必ず支払わなければならない税金です。したがって、節約できないコストとして、日常的に重くのしかかることになるでしょう。

空き家管理の重要性の高まり

固定資産税増額の要因となる「特定空家」や「管理不全空家」にならないためには、適切な空き家管理を行わなければなりません。居住者がいない家は、通常よりも老朽化のスピードが速くなりやすい傾向にあります。したがって、定期的に空き家へ通い、然るべき修繕や点検を行う必要があるのです。
とはいえ、たとえば空き家になった実家を相続したケースなど、所在地が遠方になることもあるでしょう。そのような場合、時間の取れるタイミングで自ら現地に赴くか、空き家管理サービスなどに管理を委託するのが一般的です。しかし、いずれの方法も時間・体力・費用面での負担が大きいため、長期継続は負担になりやすいと言えます。

不動産価値への影響

住宅用地特例が適用されない土地は、不動産価値も通常より低くなるのが一般的です。土地を購入したい人は、基本的に新しい家を建てるための土地を求めています。したがって、老朽化した空き家が残っている上に、固定資産税も高くなるような土地は購入するメリットがほとんどありません。その結果、市場価値も下がり、通常の評価額よりも低い値段でしか売却できなくなる可能性があるのです。

固定資産税6倍を回避するための空き家の管理方法

空き家の固定資産税増額を防ぐために、以下の3点を意識しましょう。

  • 定期的な清掃とメンテナンス
  • 行政への相談と適切な対応
  • 不動産管理会社の活用

基本的には、空き家を適切に管理することで、特定空家・管理空家の判定を回避できます。

定期的な清掃とメンテナンス

家屋の定期的なメンテナンスは、空き家管理の基本と言えます。換気・清掃・点検・修繕の4つを意識して、空き家管理を継続させましょう。

国土交通省では、空き家所有者向けに『空き家管理チェックリスト』を公開しています。以下に一部内容を引用するので、参考にしてください。

【全体】

  • ☐定期的に以下の管理を行っていますか。
    通気や換気/排水設備の通水/敷地内の清掃/庭木の枝の剪定/郵便物等の確認・整理
    【冬期の場合】給水管の元栓の閉栓/積雪の状況に応じた雪下ろし
    【擁壁がある場合】水抜き穴の清掃

【外観】

  • ☐外装材などにはがれ、破損や汚損はありませんか。
    不法侵入につながるような窓の破損はありませんか。
    はがれた部材などは撤去、補修などを依頼しましょう。

【屋内】

  • ☐アスベストが露出していませんか。
    アスベストの除去などを専門業者に相談しましょう。

【敷地内】

  • ☐立木の幹が腐ったり、大枝が折れたりしていませんか。 枝がはみ出して、通行障害などになっていませんか。
    立木の伐採、枝の剪定などを行いましょう。

より詳しいチェック項目は、国土交通省『空き家管理チェックリスト』で確認してください。

ご自身での管理が難しい場合は、空き家管理業者や修繕業者に依頼するのがおすすめです。

行政への相談と適切な対応

特定空家・管理不全空家に指定されても、すぐに固定資産税が6倍になるわけではありません。
指定後は原則として自治体からの指導や助言が行われるため、その際に適切な対応をすれば、特定空家・管理不全空家から除外されます。

たとえば屋根や外壁の修繕、庭木の剪定などを行った結果、近隣へ被害を与える危険性がないと判断されれば、対象外となるのが一般的です。特定空家・管理不全空家に指定された、または現時点の所有空家の判定が気になる場合は、どのような対応が必要か、自治体に相談するとよいでしょう。

不動産管理会社の活用

空き家管理サービスをはじめとする不動産管理会社を活用すれば、手間をかけずに最低限の空き家管理が可能になります。
内容としては、月1回、敷地内の巡回や清掃、投函物の整理、屋内の換気などを行うのが一般的で、会社によってはホームセキュリティの追加も可能です。月額利用料金はおよそ5,000〜15,000円が相場で、サービス内容の充実度や、ひと月あたりの巡回回数によって変動します。遠方にお住いであれば、空き家管理のハードルはさらに上がるものです。そのような場合でも、不動産管理会社であれば安心して空き家管理を任せられます。
なお、おすすめの空き家管理サービスは以下の記事で紹介しているので、あわせて参考にしてください。

参考:「おすすめの空き家管理サービス5選 | 必要性・メリットや空き家を放置するリスクを合わせて解説

空き家の固定資産税6倍に関するよくある質問

最後に、空き家の固定資産税に関するよくある質問にお答えします。

空き家の定義とは?

「空家法」における空き家の定義は、以下の通りです。

建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。

つまり、空き家とは、「個人もしくは法人が所有する建物および土地のうち、居住者・使用者の不在が常態化している物件」であると言えるでしょう。なお、「常態化」の基準としては概ね1年間であるとされています。

参考:東京都東久留米市『空家等の定義

勧告を受けた場合の対処法は?

特定空家・管理不全空家の「勧告」を受けた場合、所有する不動産が住宅用地特例の適用から除外され、翌年から固定資産税が最大6倍まで増額されます。したがって、利用予定の無い空き家が勧告を受けた場合は、すみやかに処分方法について検討しましょう。
基本的には、空き家をそのままにして売却するか、空き家を解体し更地にして売却するかのどちらかです。ただし、古家付きの土地は市場価格が低く、更地にする場合も解体費用が数百万円ほどかかる可能性があります。どちらにせよ一般的な不動産売却においては高い需要が見込めない点がネックです。仲介での売却が難しい場合は、専門の買取業者へ依頼するのがよいでしょう。

固定資産税の軽減措置は他にある?

固定資産税の軽減措置は、住宅用地特例の他に以下が挙げられます。

名称詳細軽減率
認定長期優良住宅に関する特例措置新築住宅が一定の認定長期優良住宅であると認められた場合、固定資産税を一定期間減額する戸建て(2階以下):5年間½マンション等(3階以上の中高層耐火住宅):7年間½
長期優良住宅化改修に係る固定資産税の減額措置一定の耐震改修工事または一定の省エネ改修工事を行い、増改築による長期優良住宅の認定を取得した場合について、翌年度分の固定資産税を減額する
耐震改修に係る固定資産税の減額措置昭和57年1月1日以前から所在する家屋に対し、現行の耐震基準に適合する耐震改修工事を行った場合について、翌年度分の固定資産税を減額する½
バリアフリー改修に係る固定資産税の減額措置一定の個人が、新築後10年以上を経過した家屋に対して、一定のバリアフリー改修工事を行った場合、翌年度分の固定資産税を減額する
省エネ改修に係る固定資産税の減額措置平成26年4月1日以前から所在する家屋に一定の熱損失防止改修工事(省エネ改修工事)を行った場合について、翌年度分の固定資産税を減額する

優良住宅の新築や、既存住宅の耐震・改修など、住宅寿命を延ばす工事を行った場合に、固定資産税の軽減が適用される傾向にあると言えるでしょう。なお、いずれの軽減措置も、令和8(2026)年3月31日が適用期限となっているため、注意が必要です。(※2024年12月時点)

まとめ

ここまで、固定資産税が6倍になる背景や対策について詳しくお伝えしました。固定資産税を抑える上で重要なポイントは「空き家を適切に管理すること」です。
2023年12月の法改正により、特定空家に加え、管理不全空家も新たに増税の対象となりました。使う予定の無い空き家を所有している場合、定期的な清掃や修繕を行い、自治体に相談することが大切です。また、空き家管理サービスの利用や、早期の売却検討も有効な選択肢と言えるでしょう。空き家を放置することで、経済的負担が増すだけでなく、不動産価値の低下や地域への悪影響を招くおそれがあります。適切な対応を取ることで、空き家にまつわるトラブルや固定資産税の増額を未然に防ぎましょう。

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本記事の監修

戸建買取再販事業部 事業部長森一也

鉄道を通じて地域の発展に貢献したいとの思いから、JR西日本に入社後、鉄道電気設備の維持・管理業務に携わる。
鉄道だけでなく幅広く地域の発展に貢献したいとの想いから、不動産の買取再販を行うこのびに参画。
鉄道業務で培った高い安全性・信頼性を自身の価値観とし、お客様との信頼関係構築を第一に、一人ひとりに寄り添った提案をすることを大切にしている。
このびでは営業・リフォーム・販売の経験を持ち、現在は事業統括・推進を行っている。
「このび」を通じてお客様に豊かな生活を提供することで、地域の発展に貢献したいと考えている。
子育て真っ盛りの1児の父。趣味はキャンプ。

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