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今回も実家の売却について解説していきます。
前回の記事では、実家を生前に仲介経由で売却する場合の流れについて解説してきました。
今回の記事では、以下の流れに沿って解説していきます。
ここからは個別に解説していきます。
目次
買取業者に売却する場合と仲介経由で売却する場合の基本的な流れは以下の通りとなります。
売却の手順 | 買取業者に売却する場合 | 仲介経由で売却する場合 |
相場を調べる | 約1週間 | |
価格査定を行う | 約1週間 | |
媒介契約の締結する | なし | 約1週間 |
売却活動を始める | なし | 約3か月~半年 |
売買契約を締結する | 約2週間~1カ月 | |
決済・引き渡し | 約2週間~1カ月 |
実家の売却において買取業者に売却する場合、仲介経由で売却する場合の第三者の買主を探す工程が不要となるため、媒介契約締結や売却活動という作業が省かれることが分かります。
ここからは買取業者に売却する際のメリット・デメリットについて解説していきます。
メリットとしては以下の通りとなります。
買取の最大のメリットとして「売却スピードが早い」という点が挙げられます。
上記の表のとおり、仲介での売却で行う媒介契約や広告活動が省かれるため、売却活動が1〜2カ月程度削減出来ることになります。
前回の記事で仲介経由で売却する場合には、契約不適合責任を負うという解説を行いました。
具体的には、物件に瑕疵があった状態で売却した際に、売却後にもその修繕義務を負い続けたり、売買契約の解除される可能性があることです。
しかし、買取業者に売却する際には、契約不適合責任を免除される場合があります。
多くの買取業者は契約不適合責任を免責にするという条件で買取価格を提示する場合があります。
これは売主の責任負担を減らして売却しやすいという大きなメリットに繋がります。
仲介経由で売却する場合には仲介手数料が発生しますが、買取業者への売却の場合には直接売買となるので、仲介手数料が不要となることもメリットの一つと言えるでしょう。
買取業者への売却の場合には第三者への内覧対応も不要となります。まだ、生活感のある状況の中で頻繁に第三者を招き入れることは誰でも抵抗があることで、そのたびにスケジュール調整や清掃を行い案内をすること自体もストレスが掛かることなので、その手間が省けるという点もメリットの一つといえるでしょう。
例は少ないですが、事故物件でも売却しやすいという点もメリットとして挙げられます。
ここで事故物件についての定義について整理いたします。
大まかに分けて以下のような分類となります。
事故物件に該当しない | 事故物件に該当する | |
自然死・老衰 | 短期間で発見された場合※特殊清掃は不要 | 長期間にわたって人知れず放置された場合※特殊清掃が必要 |
その他 | 転落事故(自宅の階段)、転倒事故(入浴中)、食事中の誤嚥 | 他殺、自殺、事故死、火災による死亡、原因が明らかでない死亡 |
参照:国土交通省 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
上記の表のとおり、自然死、老衰においても事故物件と判断される場合があります。万が一の場合に備えて、ご両親や親族がご高齢で一人暮らしを続けている場合には、可能な限り連絡を取り合うことをおすすめします。
次にデメリットについてですが、最大で唯一のデメリットが「売却価格が安い」という点です。
買取業者は購入した物件をリノベーションして再販したり、解体して土地として販売したり、新築の戸建てを作り販売を想定しています。
他にも仲介に比べた際に瑕疵の免責等のリスクを承知で購入することから、売却価格が安くなるという構図になります。
次に相続後に売却する場合の流れについて解説していきます。
生前に実家を売却する場合と比べて所有者が故人となっているという点で流れが大きく異なりますが、名義変更を行った後の売却方法は同じなので、相続後の所有権移転までの流れについて重点的に解説していきます。
全体の流れとしては以下の通りとなります。
1.遺言書の有無の確認
2.遺産分割
3.実家の名義変更
4.土地境界の確認
以降は売却の流れと同じ
ここからはそれぞれについて解説していきます。
実家の売却に当たっては、まず最初に遺言書が存在するかどうかについて確認する必要があります。
遺言書とは、故人が自分自身の財産を誰にどう残すかを意思表示したものです。
遺言書には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
それぞれ個別の要件があり有効ですが、法的な要件を満たすという条件で公正証書遺言が多い傾向にあります。
ここからは遺言書があった場合と無かった場合で流れが異なるためそれぞれの場合について解説していきます。
遺言書がある場合は、個人の財産について被相続人(故人)の遺言書の内容に沿って分割されることになります。
遺言書によっては、具体的な割合が示されていなかったり、特定の人を指名してその人が割合などを一任して決める等の場合があります。
先ほどの説明の通り遺言書には3つの種類がありますが、公正証書遺言についてはそのまま開封しても有効です。一方で、自筆証書遺言と秘密証書遺言については開封の際に家庭裁判所の検認を受ける必要があるので、遺言書がどの種類のもので、どのような手続きがこの後必要になるかはよく確認しましょう。
遺言書が無い場合は、遺産の分割は民法で定められた相続人によって決められます。民法では、以下の通りに相続の順位が定められています。
順位 | 概要 |
第1順位 | 死亡した人の子供 |
第2順位 | 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母) |
第3順位 | 死亡した人の兄弟姉妹 |
ドラマなどでよくある内縁の妻やお手伝いさんが急に相続人として現れるというストーリーがありますが、彼等はあくまでも遺言書が存在する場合に限り相続人になりうるため、遺言書が無い場合の法定相続人にはならないという点を理解しておきましょう。
次に遺産分割を行っていきます。
先ほども説明した通り遺言書がある場合は遺言書に従い相続を進めていきますが、遺言書が無い場合は遺産分割行儀によって財産の分割方法を決めていきます。
相続には以下の4種類の方法があり、それぞれのメリット・デメリットについては以下の通りとなります。
分割方法 | メリット | デメリット |
現物分割 | ・分かりやすい ・手続きが簡単 ・特例を使うと相続税を節税できる | ・不公平になることがある ・遺産の評価などで揉める可能性がある |
換価分割 | ・公平に遺産分割が出来る ・資金がなくてもできる | ・手間がかかる ・経費がかかる ・所得税がかかることがある |
代償分割 | ・公平に遺産分割が出来る ・不動産を売却しなくてよい ・特例を使うと相続税を節税できる | ・多額の代償金が必要になることがある ・代償金の算出で揉める可能性がある |
共有分割 | ・公平感がある ・費用や手間がかからない | ・管理が難しい ・売却しにくくなる ・第二相続などで権利が複雑化する |
ここで実家を誰の所有物とするかが課題となりますが、他の資産と比較して分割が容易ではないので分割方法が異なってきます。
親族間での遺恨を残さないという観点で考えると現物分割か換価分割がおすすめの方法となります。
ここでは、現物分割と換価分割について解説していきます。
現物分割とは、家、土地、現金、有価証券等をそれぞれ、妻が家、子供が土地、父と母が現金等といったようにそれぞれの財産を単独保有するという方式です。
実家の売却に関して最大のメリットは単独名義で売却できるという事です。
売却においては、複数人で所有又は共有している場合は複数人又は全員の同意が必要となりますが、単独名義の場合はその人の独断で判断が出来るので、売却がスムーズに行えるということがポイントです。
換価分割は実家を含む相続財産を全てお金に変えてから相続分を分配するという方法です。
この場合、売却が完了すると全てお金という状態にして分配が出来るのでもめごとが少ないことが特徴です。
ただし、相続後に売却をするにあたって、暫定的に実家を共有名義にする必要があり、その間に他の共有者が売却に反対する場合は売却が出来なくなってしまうという懸念があります。
遺産方法も決まったので、実家の名義変更に移っていきます。
名義変更には所有権移転登記が必要となります。
相続において名義変更に必要な書類は以下の通りとなります。
書類名 | 取得場所 |
相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村の役場 |
相続人全員の住民票の写し | 市区町村の役場 |
死亡した方の出生から死亡までの戸籍謄本又は除籍謄本 | 市区町村の役場 |
固定資産評価証明書 | 市区町村の役場 |
相続関係説明図 | 自分で作成 |
登記申請書 | 法務局 |
所有権移転登記は、申請者の最寄りの登記所では申請できないため、実家の所在する地域を管轄する法務局で申請が必要です。
また、所有権移転登記には登録免許税がかかります。
登録免許税は固定資産税評価額と税率を掛け合わせ算出され、相続の場合税率は0.4%となります。
例として固定資産税評価額が2500万円の不動産であれば、登録免許税はおおよそ10万円となります。
また、名義変更での必要な申請書作成には専門知識と労力が掛かるため、多くの方は司法書士に依頼します。
実家の規模にもよりますが、固定資産税評価額が2500万円程度であればおおよそ10万円程度が追加で掛かると認識しておきましょう。
相続後に売却する前の最後の作業として土地境界の確認があります。
これは隣地との土地境界が明確になっているかどうかを確認する作業で、比較的新しい物件(おおよそ築30年以内)であれば土地境界が確定していますが、それ以前の物件若しくは中古で購入した物件等の場合には隣地との境界確定が済んでいないことがあります。
まず最初に確定測量図と呼ばれる測量図があるかどうかを確認しましょう。これがあれば境界画定は済んでいるため、売却へと向かっていけます。
確定測量図が無い場合には、境界線ごとに筆界確認書又は境界標があるかどうか確認しましょう。
筆界確認書とは対象の隣地との境界線が確認されている書類をさします。
境界標とは、石やコンクリート等で打ち込まれたしるしのことで、それぞれを繋ぎ合わせることで境界が明確になることを確認したものです。
これらの書面が一切ない場合には、改めて確定測量を行う必要があります。
確定測量には測量士へ依頼するだけでなく、隣接する所有者や道路を管理する行政等と立ち会いが必要となります。
ただし、この確定測量図や境界が明確になっていないと売却できないかというとそうではありません。
中古物件の多くは境界確定が出来ていない状態で売買が行われています。ただしその分割安な売却価格になってしまうので、少しでも高値で売却したい場合は、境界確定を行うことをおすすめします。
ここからは先は前回記事の仲介経由で売却する場合と今回の記事の前半の買取業者に売却する場合の流れに沿って売却を進めていくことになります。
いかがでしたでしょうか。
実家の売却には生前の売却と相続後の売却があることは理解していただけたかと思います。
相続の際には故人との整理に加えて、所有権移転登記が必要になる等、あわただしい中で複数の作業をこなす必要があるので時間的にも精神的にも厳しい時期が続くことになります。
最近では相続税対策も兼ねて生前に売却を行うケースも多くなってきたので、家族で集まった際にでも実家についてどう考えていくかを議論しても良いかもしれません。
鉄道を通じて地域の発展に貢献したいとの思いから、JR西日本に入社後、鉄道電気設備の維持・管理業務に携わる。
鉄道だけでなく幅広く地域の発展に貢献したいとの想いから、不動産の買取再販を行うこのびに参画。
鉄道業務で培った高い安全性・信頼性を自身の価値観とし、お客様との信頼関係構築を第一に、一人ひとりに寄り添った提案をすることを大切にしている。
このびでは営業・リフォーム・販売の経験を持ち、現在は事業統括・推進を行っている。
「このび」を通じてお客様に豊かな生活を提供することで、地域の発展に貢献したいと考えている。
子育て真っ盛りの1児の父。趣味はキャンプ。