実家の不動産を相続!名義変更や活用の手続き方法と費用を解説

今回の記事では、不動産を相続した際の名義変更について、必要な手続きや費用、手間について説明します。

そのうえで、自分で行う場合の注意点や、専門家に依頼した際の報酬についても解説します。

実家を相続する際の選択肢について

親が亡くなった際に実家などの不動産を相続する場合、以下の選択肢があります。

自分や親族が住む

実家に住む場合、毎年固定資産税などの保有税が発生し、老朽化が進んでいる場合は修繕が必要です。

売却または賃貸に出す

売却や賃貸を考える際は、複数の不動産業者に相談し、近隣の相場を確認して判断するのが良いでしょう。立地が良ければ、リフォームして賃貸に出すのも有効です。また、相続した空き家を売却する場合、譲渡所得の金額から最大3,000万円を差し引く特例があります。

参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

更地にして活用する

建物を取り壊して更地にする場合、駐車場やアパート、ロードサイド店舗など様々な活用方法が考えられます。土地の広さや立地に合った方法を選びましょう。ただし、取り壊し費用が100万円前後かかることや、更地のまま放置すると固定資産税が最大6倍に増加することに注意が必要です。

相続放棄または限定承認する

相続を放棄する場合、すべての相続財産を放棄する必要があります。ただし、生命保険金などは受け取れます。限定承認は、借金などのマイナス財産をプラス財産の限度で相続人が負う制度ですが、手続きが非常に複雑です。どちらの手続きも、相続開始から3カ月以内に行う必要があります。

実家を相続する際に必要な手続きと注意すべき3つの期限

実家の相続には、相続が発生してから期限内に行わなければならない手続きがいくつかあります。

覚えておくべき期限は、3カ月、4カ月、10カ月です。

財産状況の調査と遺言書の確認

相続が発生したら、まずは故人名義の財産を詳しく調べましょう。銀行、証券会社、保険会社など、契約している金融機関にすぐに連絡を取ることが大切です。特に、家族に知られていない借金がある場合、調査に時間がかかることがあります。

遺言書やエンディングノートがあるかも確認すると良いでしょう。遺産分割自体に期限はありませんが、スムーズに進めるために、これらの有無は重要です。自筆の遺言書が見つかった場合は、速やかに家庭裁判所に提出し、検認の請求をする必要があります。

相続放棄や限定承認の3カ月以内

相続開始を知った日から3カ月以内に、相続放棄や限定承認の申述を家庭裁判所に行う必要があります。故人に多額の借金がある場合は特に注意が必要です。プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合、これらを行わないと相続人が借金を負担することになります。

相続放棄は1人でも可能ですが、限定承認は相続人全員で行う必要があります。メリットとデメリットを考慮し、専門家に相談するのが良いでしょう。期限を過ぎると、単純承認となり、すべての財産を相続することになります。

準確定申告の4カ月以内

次に、4カ月以内に行うべきなのが、故人の準確定申告です。亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得に対する申告を行います。ただし、相続放棄をした場合や、年金収入が400万以下、その他の所得が20万円以内の場合は不要です。

相続税の申告と納付の10カ月以内

最後に、10カ月以内に相続税の申告と納付を行います。故人の財産が相続税の基礎控除の範囲内であれば、申告は不要です。基礎控除は「3,000万円+法定相続人の人数×600万円」となります。正確に確認するために、専門家や税務署に相談することをお勧めします。

遺産分割協議書や名義変更は早めに

遺言書がない場合、遺産分割協議は早めに進めることが大切です。相続人が複数いる場合、それぞれの相続税額にも影響するためです。

相続税がかからなくても、銀行や証券会社の口座を引き継いだり、実家の名義変更(相続登記)をする際には、遺産分割協議書や相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明が必要です。協議を早めに始めましょう。協議書の作成は、相続に詳しい弁護士や司法書士、行政書士に依頼できます。

また、遺産分割で実家を相続することが決まったら、相続登記を行うことで、住むだけでなく、売却や賃貸なども自由に処分できるようになります。

相続による不動産の名義変更について

不動産は、所有者を明確にするために履歴事項証明書(登記簿)によって公示されています。この公示する手続きを「登記」と呼びます。

人が亡くなると相続が発生し、所有権が故人から相続人へ移ります。この際、故人の名義のままではいけないため、不動産の名義を相続人に変更する必要があります。これを相続による不動産の名義変更(以下「相続登記」)といいます。

2024年4月からは法改正により相続登記が義務化されますが、現在の法律では義務ではありません。そのため、放置しても罰則はありませんが、将来のトラブルを避けるため、早めに行うことが推奨されます。

相続不動産の名義変更を放置することのデメリット

数次相続のリスク

相続登記を放置すると、相続人の中でさらに相続が発生し、数次相続となる可能性があります。これにより親戚間の関係が薄まり、話し合いが難しくなります。例えば、兄弟間での手続きが、疎遠な親戚同士での話し合いになることがあります。不動産は簡単に分けられないため、売却して金銭で分割する必要が生じることがあります。

相続持分売却のリスク

相続登記において法定相続分で登記する場合、相続人の1人が単独で手続きを行うことができます。例えば、長男が単独で相続登記を行い、その持分を他人に売却してしまうと、母と次男は他人と不動産を共有することになります。法律上問題はなく、実務上も共有持分だけを買い取る業者が存在します。早めに遺産分割協議を行い、誰が不動産を取得するか決めることが重要です。

相続分の差押えのリスク

相続人の中に借金を抱えている人がいる場合、債権者が故人名義の不動産を差し押さえることがあります。例えば、次男が借金を抱えている場合、債権者が代位登記を行い、次男の持分を差し押さえることが可能です。その後に遺産分割協議を行っても、債権者に対抗できず、完全な所有権を取得するためには次男の借金を返済する必要があります。

自分で相続不動産の名義変更をする手続き

遺言書があり、相続人が少ない場合は、自分で相続登記を行うことも可能です。

相続登記の手続きでは、登記申請書と添付書類を、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。管轄の法務局は、法務局のホームページで確認できます。

申請方法には、窓口での申請、郵送、オンライン申請があります。記載誤りや添付漏れがある場合、修正が必要になるため、管轄法務局が近い場合は直接出向くのが良いでしょう。オンライン申請は専用ソフトが必要で、郵送の場合は遠方だと修正に赴く際の交通費がかかるため注意が必要です。

自分で相続不動産の名義変更をする際の必要書類について説明します。

戸籍謄本等を集める

遺言書の有無により必要書類が異なります。

遺言書がある場合

  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言の場合は不要)
  • 被相続人の戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 不動産を相続する人の戸籍謄本
  • 不動産を相続する人の住民票
  • 遺言執行者の選任審判書謄本(遺言書で遺言執行者が選任されている場合は不要)

遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合

  • 遺産分割協議書(法定相続人全員の署名・実印の捺印があるもの)
  • 被相続人出生から死亡までの連続した戸籍
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 不動産を相続する人の住民票

遺言書も遺産分割協議書もない場合

  • 被相続人出生から死亡までの連続した戸籍
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 不動産を相続する人の住民票

遺言書があると、集める書類の数が少なく済み、相続登記が簡単になるメリットがあります。

登記申請書の作成

登記申請書を作成する必要があります。司法書士に依頼すれば、書類の作成や収集も含めて代理で行ってもらえますが、自分で行う場合は申請書も自分で作成します。法務局のホームページに申請書の書式例がありますので、参考にしてください。

相続登記にかかる費用

相続登記には、登録免許税や戸籍謄本などの取得費用が最低限必要です。登録免許税は、相続する不動産の固定資産税評価額の0.4%です。具体的には、1,000万円あたり4万円となります。評価額は、市区町村役場や都税事務所で発行される評価証明書に記載されています。戸籍謄本は、1通450円(現在の戸籍)から、750円(原戸籍)で、住民票や不動産の履歴事項証明書なども含め、通常の家族4人ほどの相続登記では1万円程度で済むことが多いです。

司法書士に名義変更を依頼すべきケースと費用

相続人が自分で相続登記を行うケースについて述べてきましたが、以下のような場合は司法書士に相談・依頼するのが良いでしょう。

  • 遺言書がなく相続人が多い場合
  • 不動産の数が多い場合
  • 不動産所在地が遠方にある場合
  • 不動産の売却を急いでいる場合
  • 相続税がかかる規模の遺産がある場合
  • 疎遠な相続人がいる場合
  • 法務局に相談しても理解できなかった場合

司法書士に依頼する場合、登録免許税や書類の取得実費に加えて、司法書士報酬がかかります。報酬は事務所ごとに異なり、相続内容によっても変わりますが、例えば被相続人が父で相続人が妻と子2名、不動産が一戸建ての自宅のみで遺言書があるケースでは、報酬は10万円程度に収まることが多いです。

実家を相続した際にかかる税金

実家を相続すると、相続税と登録免許税が発生します。

相続税

亡くなった方の財産額を計算する際、現金や株式などの金融商品は通常、時価で評価されます。不動産の場合、建物は固定資産税評価額を使用します。土地は相続税路線価に基づく路線価方式、または固定資産税評価額をもとにした倍率方式で評価される相続税評価額により計算されます。

登録免許税

登録免許税は登記手続きにかかる税金です。相続登記では、不動産の固定資産税評価額の0.4%が課税されます。これは、売買や贈与による所有権移転登記の際の税率2%に比べて5分の1と低くなっています。

実家を相続する際に考慮すべき相続税の節税方法

小規模宅地等の特例

実家を相続する際に有効な節税方法として、小規模宅地等の特例があります。この特例は、亡くなった方と同居していた配偶者などが受けられ、特定居住用宅地等に該当する土地は、330平方メートルまでの評価額が80%減額される制度です。例えば、1億円の土地であっても、2,000万円で評価されます。ただし、この特例を亡くなった方と同居していなかった子が利用するには、いくつかの要件を満たす必要があります。

配偶者の相続税額の軽減

配偶者には、相続税に関して大きな優遇措置があります。配偶者が相続した財産の金額が1億6,000万円、または法定相続分相当額のどちらか多い金額まで、相続税がかからない制度です。たとえば、相続財産の評価額が100億円の場合でも、配偶者が50億円まで相続するなら、相続税はかかりません。この制度を活用することで、相続税を大幅に抑えることが可能です。ただし、配偶者の税額軽減を利用する場合は、確定申告が必要であり、将来の二次相続の対策も考慮する必要があります。

相続空き家の3,000万円特別控除

相続した実家が空き家である場合、一定の要件を満たせば、売却時に譲渡益から3,000万円を控除できる特別制度があります。これにより、売却益が3,000万円以内であれば、所得税がかかりません。要件には、昭和56年5月31日以前に建築された住宅であることや、相続開始直前に他の居住者がいないこと、売却代金が1億円以下であることなどがあります。

相続財産譲渡時の取得費の特例

相続した財産を一定期間内に売却した場合、相続税額の一部を取得費に加算できる制度があります。この特例を利用することで、譲渡益を減らすことができます。ただし、この特例は、相続空き家の3,000万円特別控除と併用できません。

実家を相続する際の注意点

共有はトラブルのもと

実家の土地や建物を複数人で共有すると、将来的にトラブルが生じる可能性があります。そのため、土地や建物は細かく分割しない方が賢明です。例えば、実家の不動産を長男と次男がそれぞれ半分ずつ持つと、売却や賃貸の手間が増え、将来の相続時にも親戚間のトラブルに発展する可能性があります。

空き家にしないこと

近年、空き家問題が深刻化しており、2015年には「空き家対策特別措置法」が施行されました。相続した実家を空き家のまま放置すると、税負担が増加し、行政から費用を請求されたり、近隣住民から損害賠償を求められる可能性があります。複数の専門家に相談し、物件の状況に適した対策を選ぶことが重要です。

相続財産の平等な分配

兄弟姉妹がいる場合、実家を相続する人とその他の相続人との間で、財産を平等に分けるのが難しいことがあります。現金などの他の相続財産があれば良いですが、ない場合はトラブルになる可能性があります。この場合、相続した人が他の相続人に代償金を支払って調整する「代償分割」という方法も選択肢の一つです。

まとめ

相続では、短期間で多くの手続きを行う必要があります。実家を相続する際は、住むのか売るのかなどの利用方法によって、手続きや税金が変わります。

また、相続不動産の名義変更は自分でも可能ですが、書類集めや手続きが煩雑に感じられることも多いでしょう。司法書士に依頼すると費用はかかりますが、手間やストレスを大幅に軽減できます。

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本記事の監修

戸建買取再販事業部 事業部長森一也

鉄道を通じて地域の発展に貢献したいとの思いから、JR西日本に入社後、鉄道電気設備の維持・管理業務に携わる。
鉄道だけでなく幅広く地域の発展に貢献したいとの想いから、不動産の買取再販を行うこのびに参画。
鉄道業務で培った高い安全性・信頼性を自身の価値観とし、お客様との信頼関係構築を第一に、一人ひとりに寄り添った提案をすることを大切にしている。
このびでは営業・リフォーム・販売の経験を持ち、現在は事業統括・推進を行っている。
「このび」を通じてお客様に豊かな生活を提供することで、地域の発展に貢献したいと考えている。
子育て真っ盛りの1児の父。趣味はキャンプ。

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