相続した家に共同名義人がいたらどうすればいい?具体的な手続きと注意点を解説
共有名義の家を相続する場合、共有持分を相続登記する必要があります。ただし、共有名義人と持分を明確にして慎重に対応しないとトラブルになる恐れもある...
今回は、共有名義不動産の売却方法とその場合のポイントについて解説していきます。
共有名義不動産は一般的には聞きなじみがないかもしれませんが、主に親族間で相続する場合に利用される不動産の所有形態の一つとなります。
共有名義不動産は個人や法人所有の戸建て住宅や一棟ビル、区分所有のマンションと比較すると売却方法が大きく異なります。
特に相続の場合は相続の開始を知ってから3か月以内に相続の承認又は放棄を選択する必要があるので、株式等と異なり現金化しにくい等の難点があることを理解しないまま相続してしまうと苦労することがあるので注意した方が良いでしょう。
今回の記事では、以下のポイントに沿って解説していきます。
ここからは個別に解説していきます。
目次
共有名義不動産とは文字通り「共有名義で所有している不動産」という意味です。
なんとなく意味は理解できるかと思いますが、ここでは以下のポイントに沿って解説していきます。
共有名義とは、不動産を複数の人が法的に所有する形態を指します。
登記簿謄本には以下のように共有名義として所有権が記載されます。
権利部(甲区)所有権に関する事項 | |||
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 所有権移転 | 平成1年1月1日第〇〇〇号 | 原因 平成1年1月1日 売買所有者 〇〇区〇〇町〇〇号西 太郎 |
2 | 所有権移転 | 令和1年1月1日第〇〇〇号 | 原因 令和1年1月1日 相続 共有者〇〇区〇〇町〇〇号持分 2分の1西 花子 〇〇区〇〇町〇〇号持分 2分の1西 次郎 |
今回のケースでは、令和1年1月1日に花子さんと次郎さんが太郎さんの所有権を共有名義で相続した場合の記載になっています。
区分所有の場合は必ず図面などが添付され、どの分を明確に所有しているという表記になりますが、共有の場合の持分という意味は具体的に建物の1階部分や平面図上で区分けされた部分という意味ではなく、あくまでも建物全体に対しての持分という表記である点がポイントです。
共有名義の成立には、通常、相続や贈与、共同投資など、複数の人々が不動産に対して権利を持つことになる状況が必要です。
相続の場合など明示的な合意によって共有名義を形成する場合もあれば、実際には夫婦でお金を出し合っているものの書類上は夫婦どちらかの所有になっている場合など、法律によって自動的に共有名義が発生する場合もあります。
共有名義は、主に相続や贈与の際に生じることが多いです。
相続では、複数の相続人が故人の不動産に対する権利を共有することになります。
以下の資料は2020年に三菱UFJフィナンシャルグループが調査した相続した財産額とその内訳になります。
参照:三菱UFJフィナンシャルグループ 退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査
この表からも分かる通り、一般的な家庭において相続す資産の半数近くが不動産であり、次に現預金、有価証券と続きます。
この場合、不動産は他の資産に比べて現金化しにくいという特徴があるため、全ての資産を等分する方法が相続人がもめることなく相続する方法の一つであるため、共有という形で不動産を相続することになります。
他にも贈与の場合にも共有となる場合があり、生前贈与などでもめることなく資産を分配する場合などに適用されます。
次に共有名義の不動産に対して一人で出来ることと出来ないことをまとめていきます。
以下の表は共有物に対して手を加える場合の方法のまとめとなります。
どのように行うか | 具体例 | |
保存行為 | 一人で出来る | 共有物の修理、不法占拠者への明け渡し請求 |
管理行為 | 過半数の同意が必要 | 共有物を貸すこと |
変更行為 | 全員の同意が必要 | 共有物を売却すること、増改築 |
この表から分かる通り、共有名義の不動産に対しては一人で出来ることと過半数の同意が必要なことと全員の同意が必要なことに細かく分かれていることが分かります。
更に共有物の売却には全員の同意が必要なことから、売却に当たっては相当なハードルがあるということが分かるかと思います。
続いて、共有名義不動産の売却方法について解説していきます。
一般的な不動産売却においては、見ず知らずの第三者が購入するケースがほとんどです。
一方で、共有持分の場合は、第三者が購入しても利活用の範囲が限られており、一般の方への売却は現実的ではありません。
そこで、ここからは共有名義の不動産に対しての現実的な売却方法を以下の流れに沿って解説していきます。
それぞれの特徴をまとめた表は以下の通りとなります。
他の共有者の同意 | 売却までの期間 | 売却価格 | |
買取業者に売却 | 不要 | 〇:他の方法に比べると早く売却出来る | ×:売却価格は他に比べて安くなる |
他の共有者に売却 | 必要 | △:他の共有者との調整が必要 | △:買い取り業者よりは高くなる傾向にある |
共有者全員で売却 | 必要 | ×:他の共有者との調整に加えて購入者を探す必要がある | 〇:他に比べて高くなる傾向にある |
土地を分筆して売却 | 必要 | ×:他の共有者との調整に加えて土地の分筆作業と購入者を探す必要がある | 〇:他に比べて高くなる傾向にある |
ここからは個別に解説していきます。
最初に、自分の持分に関して第三者への売却については可能です。
しかし、第三者に売却することは難しいということを理解しておきましょう。
先ほどの共有名義の不動産に対して出来ることのまとめの中で、一人でできる行為には限りがあり、貸し出しにおいては過半数の同意、売却においては全員の同意が必要となることから、資産の流動性は非常に低いことが分かります。
一方で、買取専門業者であれば持分に関しても早く売却できることが特徴です。
ただし、売却価格が他の売却方法に比べて安価になる事や、他の共有者に対して遺恨が残る等のデメリットがあることを理解しておきましょう。
次に、持分の他の共有者への売却についてです。
他の共有者が親族である場合等は、非常に現実的な方法となります。
この場合、成約価格において後々のトラブルを避けるという意味でも、専門の業者を仲介とするか不動産鑑定により売買価格を決めることをおすすめします。
価格について両者で合意できる場合は余計な費用となるので不要ですが、特に共有の場合は価格の算定方法が複雑となる事や、共有物の整理以外にも親族の場合は付き合い続くことから、お互いが納得する形で売買が行われることを前提とした取引を心掛けるべきと言えるでしょう。
次に全員の同意を得て全部の売却についてです。
これは、不動産の全部を売却することが出来るため、相場価格にて売り出せるということが最大のメリットとなります。
この場合、持分に応じて売却代金を分け合うことが望ましいでしょう。
ただし、全部を売却する場合、共有者全員の同意が必要なことを覚えておく必要があります。
数が多くなればなる程、全員の同意を取ることは困難であることは想像つくかと思いますが、売買契約書には共有者全員の捺印と署名が必要となります。
この整理に時間が掛かるという点がデメリットと言えるでしょう。
共有持ち分が土地の場合は、分筆したうえで売却することが可能です。
分筆とは1つの土地を複数に分けて改めて登記を行う手続きの事を指します。
測量を行い、その後の利用形態に応じて適切な面積に分筆しその土地を単独所有にすることで対象地については売却をすることが可能です。
この場合、売却価格は相場価格で売り出せるというメリットがありますが、分筆にすること自体に他の共有者の同意が必要なことや測量や登記について事前に費用と時間が掛かることがデメリットと言えるでしょう。
共有不動産は複数人で所有するという所有形態であるため、売却の際は少なからずトラブルが起こる場合があります。その際の例として以下のようなケースがあります。
ここからはそれぞれについて解説していきます。
先ほどの売却方法の1番目の買い取り業者へ売却した後の話となります。
買取業者は、買い取った共有持分を他の共有者に買い取るように持ちかけたり、他の共有者の持分を買い取るように交渉に入ります。
なぜなら保有しているよりも売却した方がメリットが大きいからです。
つまり、自分の持分を買取業者に売却すると、買取業者から他の共有者に対して連絡および交渉事が始まります。
逆に他の共有者が売却したのちに、あなたに買取若しくは売却の連絡が来るかもしれません。
それまでは親族や知っている人との交渉だったことが、見知らぬ買取業者とのやり取りとなるため、精神的負担が大きく共有者間でのトラブルに発展する可能性があります。
次に、人間関係の悪化についてです。先ほどの買取業者とのやり取りでは第三者との関係により発生するトラブルでしたが、他の場合でもトラブルは発生します。
例えば、持分の全部を売却する際には全員の同意が必要となるため、誰か一人でも同意しない(例:思い出の家だから売りたくない)場合には、粘り強い説得が必要な他、内容がまとまらずにそのまま関係が悪化してしまう場合があります。
共有持分の売却では、他の売却とは異なりトラブルが発生する場合が多々あります。
そこで、トラブルが発生しないように未然に防ぐ方法を以下の流れに沿って解説していきます。
ここからはそれぞれについて解説していきます。
トラブルの未然防止策として有効な手段は相続する際に不動産を共有名義で所有しないという事です。
これまでのケースでは、売却する場合にそれぞれメリット・デメリットがあるとお伝えしてきましたが、そもそも相続する際に共有ではなく単独所有又は相続のタイミングで売却することで共有という状態を避けることが出来ます。
しかし、単独所有の場合には先ほどの遺産相続の資産の構成にあった通り、現金や有価証券などの流動性の高い資産と不動産という流動性が低い資産とで違いがあるため、相続人同士の理解が必要となります。
一方で、相続のタイミングでの売却は被相続人(故人)に対しての感情さえ整理が出来れば、後々のトラブルは避けることが出来るでしょう。
次に、法的手段として共有物の分割を行うことです。
共有物分割請求とは、不動産の共有を解除するように他の共有者に対して申し出ることで、法的な強制力を持ちます。
この場合、「現物分割」、「代償分割」、「換価分割」の3つに分かれます。
現物分割とは、実家の土地と建物を花子さんが相続、畑の土地を次郎さんが相続という形で、財産をそのままの形で単独所有するように相続又は整理することを指します。
代償分割とは、共有者間での買取に近い意味合いで、土地Aの全てを花子が相続する代わりに現金1000万円を花子が次郎に支払う等、金銭のやり取りで整理をすることを指します。
換価分割とは、遺産の売却を行い、売却金額を分けて相続することを指します。
これらはあくまでも話し合いの中で整理がつけば問題ないですが、分割の方法やそれぞれの金額などで合意が取れない場合には、調停となり調停委員の立ち会いの下で裁判所で分割に向けた話し合いをすることになります。
なお、そこでも間に合わない場合には訴訟となり、共有物分割請求訴訟となり裁判所に共有状態の解消方法を決めてもらうことになります。
いかがでしたでしょうか。
共有不動産は売却自体はシンプルですが、その際の方法やメリット・デメリット等はそれぞれ異なり、交渉のための時間が掛かることや他の共有者との関係など考慮しなければならない点が多いため頭を悩ませてしまうことが多いのではないでしょうか。
共有は通常の不動産に比べて特殊な価格での整理が必要となるため、整理がつかない場合には専門の業者に相談することをお勧めいたします。
鉄道を通じて地域の発展に貢献したいとの思いから、JR西日本に入社後、鉄道電気設備の維持・管理業務に携わる。
鉄道だけでなく幅広く地域の発展に貢献したいとの想いから、不動産の買取再販を行うこのびに参画。
鉄道業務で培った高い安全性・信頼性を自身の価値観とし、お客様との信頼関係構築を第一に、一人ひとりに寄り添った提案をすることを大切にしている。
このびでは営業・リフォーム・販売の経験を持ち、現在は事業統括・推進を行っている。
「このび」を通じてお客様に豊かな生活を提供することで、地域の発展に貢献したいと考えている。
子育て真っ盛りの1児の父。趣味はキャンプ。