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今回の記事では、中古物件における訳あり物件の調べ方・見極めポイント・利活用案について解説していきます。
訳あり物件と聞くと怖い印象がありますが、どんなことが起こると訳あり物件になるのかをきちんと理解し、どのように物件を見極めるのかを理解することが重要です。
全体の流れとしては以下の通りとなります。
訳あり物件には明確な定義はなく、その理由も多岐にわたります。例えば、人が亡くなった物件の場合でも、家族に見取られ安らかに亡くなったのか、一人で亡くなり発見が遅れたのかなど、さまざまな状況があります。また、事故や事件、病死、自然死などの違いも扱い方に影響します。このように、何を「訳あり」と感じるかは人それぞれであり、その理由も非常に幅広いです。
訳あり物件とされる理由はさまざまですが、ここでは一般的なケースを3つに分けて説明します。
法的瑕疵物件とは、法律上の問題を抱える物件です。対象となる法律には、建築基準法、消防法、都市計画法などがあります。
例えば、建築基準法に違反して安全基準や建ぺい率を守っていない物件や、消防法に違反して必要な防火設備が整っていない物件が挙げられます。新築や築浅の物件ではほとんど見られませんが、古い物件の場合は、法律の施行・改正前に建てられたため“既存不適格物件”と呼ばれ、法的瑕疵を抱えている可能性があります。ただし、これらは違法物件ではありません。
環境的瑕疵物件とは、物件自体には問題がないものの、周囲の環境により不快感を覚える可能性がある物件です。
具体的には、「周囲に火葬場や葬儀場、墓地などがある」「ごみ処理場や下水処理場のにおいが気になる」「鉄道や高速道路の振動・騒音が目立つ」などが該当します。これらは生活への影響を数値化するのが難しく、どの程度が瑕疵にあたるかは個人の感じ方によります。そのため、物件探しの際には環境的瑕疵が明確に扱われることは少ないです。気になる点があれば、地図アプリなどで周辺環境を確認することをおすすめします。
一般的に訳あり物件としてイメージされることが多いのは、心理的瑕疵物件です。物件の設備や機能には問題がないものの、心理的に避けたくなる要素がある場合が該当します。
主なケースとしては、「室内や共用部で自殺や殺人、事故死が発生した」「反社会的勢力の事務所が近くにある」などがあります。これらは人によって捉え方が異なるため、明確な基準は存在しないのが現状です。
物件に心理的瑕疵がある場合、不動産情報には「告知事項あり」と記載されることが一般的です。告知事項とは、契約時に借り手や買主へ伝えるべき内容を指し、不動産会社にはこの情報を提供する義務があります。ここでは、告知義務の仕組みについて詳しく見ていきましょう。
告知義務に関する具体的なルールは法律で厳密に定められていません。そのため、どの程度の瑕疵を告知するか、また瑕疵の発生からどのくらいの期間告知義務が生じるかは、不動産会社や貸し手側の判断に委ねられています。
例えば、室内で人が亡くなっても、老衰などの自然死であれば告知しない場合もあります。また、心理的瑕疵があっても、一度入居者が入れ替われば告知されないことも少なくありません。
告知義務には明確な決まりはないものの、室内で自殺や他殺があった場合は一般的に告知されます。例えば、UR都市機構では物件内で人が亡くなったことを明確に告知し、「特別募集住宅」として賃料を下げて貸し出すケースもあります。このように、最初の1~2年間が半額の賃料で借りられるなど、メリットとデメリットを明示する仕組みが取られています。
訳あり物件には特有の特徴があるため、以下のポイントを押さえておけば、告知がなくても「訳あり物件かもしれない」と判断できる場合があります。ここでは、訳あり物件を見極めるための5つのポイントを紹介します。
周辺の類似物件と比較して家賃が3割〜5割も安い場合、その物件は訳ありかもしれません。例えば、家賃相場が5万円の地域・間取りで、同じ条件なのに3万円以下の場合です。特に建物内で一部屋だけ家賃が安い場合、訳あり物件の可能性が高くなります。
最近ではバス・トイレ別の物件が人気を集めていますが、3点ユニットバスの物件は家賃が相場より低くなる傾向にあります。それでも、1LDKの物件が相場より1万円〜2万円安い程度であれば理解できますが、それ以上に安い場合は何らかの理由があると考えられます。
事件・事故などが発生した物件は、その後最初の入居者に対して告知するのが一般的です。そのため、募集情報に「告知事項あり」「心理的瑕疵あり」「特別募集」などの表現が使われている場合があります。
多くの場合、物件概要ではなく備考欄に記載されているため、具体的な内容は不動産会社に確認する必要があります。
物件内で事件や事故が起きた場合、その建物の名前がニュースで広まることがあります。一部屋だけが現場でも、建物全体に悪い印象が残るため、オーナーが建物の名前を変更することがあります。
建物の名前が変更されていると、インターネットで「物件名+事故」と検索してもヒットしないことが多いです。気になる場合は、昔の地図を使って物件名を調べたり、近隣の住民に尋ねたりするのが良いでしょう。
定期借家契約では、契約期間が終了すると更新ができません。不動産業界では、訳あり物件の告知義務は事故・事件の次の入居者までとされています。そのため、安い家賃で入居者が入った後、早めに通常の家賃で次の人に貸したいと考える貸し手もいます。定期借家契約なら、安い家賃で長期間契約する心配がありません。
もちろん、物件に問題があるわけではなく、「取り壊しや建て替えが決まっている」「大家さんの都合による」などの理由で定期借家契約になっている場合もあります。
事件や事故によって部屋が損傷し、一部だけリフォームされていることがあります。例えば、全体的に古びているのにフローリングだけが新しい場合、不自然に感じるでしょう。壁の一部やドア周辺だけがきれいになっている場合も、その理由を確認することをおすすめします。
ただし、建物の構造上、劣化しやすい部分もあります。特に水回りは経年劣化が進みやすく、部分的にリフォームされることは珍しくありません。
訳あり物件には後ろ向きなイメージがありますが、多種多様なケースが存在します。何をデメリットとするかは借り手によって異なるため、自分の価値観に照らし合わせて判断することが重要です。
訳あり物件のデメリットが気にならない場合、相場より安い家賃が魅力となることもあります。事件や事故によって大規模なリフォームが済んだ物件もあり、リーズナブルに快適な環境を手に入れることができる可能性もあります。
また、大家さんが心理面での細やかな配慮を行ってくれる場合もあります。設備などの交渉を柔軟に受け入れてくれる大家さんであれば、通常より快適に感じられることもあります。そのため、訳あり物件をひとくくりにせず、物件ごとの特徴に目を向けることが大切です。
現在の日本では、空き家の増加や高齢者の賃貸利用率の増加が重要な課題となっています。特に、大家さんが高齢者の孤独死を想定して物件を貸しにくいという事例も少なくありません。
国土交通省の2016年の資料では、高齢者の入居に対して約6割の大家さんが拒否感を抱いていることが明らかになっています。また、国土交通省は「不動産業ビジョン2030」で「心理的瑕疵を巡る課題の解決」を主なテーマとして取り上げています。今後、告知義務のルールや内容の明確化が期待されるでしょう。
参照:国土交通省 不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~
事故物件かどうかを確認する最も確実な方法は、不動産会社の担当者に直接確認することです。宅地建物取引業法によると、不動産業者は借主の質問に対して知っている情報を隠さず正直に答える義務があります。
ただし、業者によっては「自然死や不慮の死は伝える必要がない」という解釈から、告知しない場合もあります。また、貸主から伝えられていない情報については、業者も伝えることができません。
自然死や不慮の事故死などは告知義務の対象外ですが、気になる場合はオーナーに直接問い合わせてみることをお勧めします。地域密着型の不動産会社はオーナーと親しい関係にあり、事故物件の情報に詳しいことが多いため、こうした業者に依頼するのが良いでしょう。
事故物件を調べるもう一つの方法は、「事故物件のまとめサイト」を利用することです。
ただし、個人運営のサイトには誤記載がある場合も多いので、参考程度にとどめておくのが良いでしょう。
一方で、UR賃貸住宅では「特別募集住宅」という名称で、過去にお住いの方が亡くなった住宅として割引が効いた状態で募集がなされています。
万が一、入居後に事故物件であることが判明した場合、まずは依頼した不動産会社か物件のオーナーに問い合わせてみましょう。
もしも事故物件であることを知っていたらその物件に入居しなかったと客観的に認められる場合、契約解除や損害賠償を請求できる可能性があります。
訳あり物件にはさまざまな活用方法があります。具体的には以下の方法が考えられます。
訳あり物件は第三者への売却も可能ですが、買い手が見つかりにくく、価格も低くなりがちです。重要事項説明時に瑕疵を告知しないと損害賠償を求められる可能性があるため、告知は必須です。専門の買取業者に売却すれば、迅速に対応してもらえる利点があります。
2018年6月に施行された「住宅宿泊事業法」により、民泊が注目されるようになりました。民泊は年間180日以内の営業日数制限があり、開始にはいくつかの条件と届け出が必要です。訳あり物件で民泊を行う場合、内装をおしゃれにリフォームしたり、特別なサービスを提供することで他の物件と差別化を図り、成功の可能性を高めることができます。
訳あり物件をレンタル倉庫として利用するのも一つの方法です。季節物の衣服やレジャー用品など、家に置くスペースが足りない物を一時的に保管するスペースとして貸し出すことができます。立地条件をあまり問わず、駐車スペースがあれば活用しやすい利点があります。
交通量の多い国道や街道沿いで広い敷地がある場合、建物を解体して土地のみを貸し出す方法もあります。コンビニやスーパー、ファミリーレストランなどの企業に事業用定期借地として貸し出せば、安定した収益を期待できます。また、駐車場として利用することも一つの選択肢です。
以上の方法を活用することで、訳あり物件でも有効に活用し、収益を得ることが可能です。
いかがでしたでしょうか。
瑕疵には大きく法的瑕疵、環境的瑕疵、心理的瑕疵に分かれますが、訳あり物件と呼ばれる物件の多くは「心理的瑕疵」物件であることが多いです。
特に、心理的瑕疵の場合には目に見えて分かる部分が少ないので、丁寧に調べていくことが重要です。
一方で、所有している賃貸物件等が訳あり物件となってしまうと、当初想定していた収入とは大きく異なり、収支計画が大きくぶれる可能性があります。
また、自宅として利用している場合でも、近隣からの目や自身の心象としても長く住むことに抵抗があるかもしれません。
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子育て真っ盛りの1児の父。趣味はキャンプ。