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今回は不動産売買における告知事項について解説していきます。
告知事項とは文字通り、売買の際に伝えなければならないことで、基本的にはあまりいい部分ではなくどちらかというとマイナス要素であることが多いのが実態です。
新築の場合であれば基本的に完璧な状態で売買がされるのであまり告知事項は無いのですが、中古物件の売買の際にはどうしても多かれ少なかれ告知事項が発生することがあります。
そこで今回の記事ではそもそも告知事項とはなんなのか?告知事項の具体例や見分け方等を通して、中古物件購入の際のポイントを理解してもらえればと思います。
それでは早速、解説に入っていきましょう。
目次
賃貸物件や中古の売買物件を探していると、「告知事項あり」という記載を目にすることがあります。これは過去に事件や事故が起きた物件、いわゆる「事故物件(訳あり物件)」を指します。こうした物件については、宅地建物取引業法により、借主や買主に対して重要な事項(告知すべき事項)を事前に説明することが宅地建物取引業者(不動産会社)に義務付けられています。
今回は、賃貸物件や中古の売買物件を探している方や契約を控えている方に向けて、告知事項の内容や告知事項のある物件の見分け方について説明します。
「事故物件」という言葉に明確な定義はありませんが、不動産取引においては主に「心理的な瑕疵(かし)のある物件」という意味で使われます。例えば、建物内で人が亡くなった(殺人事件や変死、自殺、事故など)場合、その物件は「事故物件」と呼ばれます。
また、事故物件には、人の死にまつわる原因だけでなく、雨による浸水やシロアリ被害で床下が腐敗している、地震や火災による損傷が残っているなど、建物自体の問題が解消されていないものも含まれます。
特に、過去に何らかの事件や事故があった物件は、次の入居者や購入者に心理的な負荷がかかるとされ、「心理的瑕疵物件」と呼ばれます。なお、瑕疵には心理的瑕疵以外にもさまざまな種類がありますので、後ほど詳しくご説明します。
物件の賃貸や売買において、心理的な瑕疵があったり、物件自体に欠陥があったりする場合、借主や買主の判断に大きな影響を与えると考えられる場合には、不動産業者はその内容を告知・説明しなければなりません。この義務を「告知義務」と呼び、これを怠ると「不告知」や「告知義務違反」として宅地建物取引業法に違反することになります。不動産業者は、告知義務違反により責任を問われることになります。
もし、事前に事故物件であることが告知されないまま入居してしまった場合、後からその事実を知ると、精神的な被害や損害を受ける可能性があります。告知されていれば、その物件を選ばなかったかもしれません。このようなケースでは、多くの場合、調停や裁判に発展します。
調停や裁判で精神的な被害や損害が認められると、不動産業者は説明義務違反となり、仲介手数料の返金や慰謝料、損害賠償、転居費用などを負担しなければならないことがあります。契約が解除されることもあります。
ただし、この告知義務については、具体的にどこまで、いつまで告知するべきか、法的に明確なルールが存在しない場合がありました。
国土交通省は2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました【国土交通省ガイドライン】。
このガイドラインが策定される以前は、たとえば賃貸住宅であれば、事件や事故があった物件の次の入居者に対しては告知義務があっても、その次の入居者には告知する義務がないとされることが多く、告知が行われていないケースが見受けられました。これは、特に賃貸住宅において、過去の判例で事故後に一定期間居住した後は、告知義務がなくなると判断されていたためです。
一方で、不動産会社や物件の所有者(貸主や売主)にとっては、告知事項に関する明確な規定がないため、いつまで告知すべきかが不明確で困惑するケースもありました。例えば、売買物件の判例では、何十年も前の事件や事故について告知しなかったことで不動産会社が告知義務違反に問われたケースも存在しました。
このような背景から、ガイドラインの策定は、不動産取引における透明性と信頼性の向上に寄与するものと期待されています。
過去には、悪質な不動産会社が事件や事故のあった物件に自社の従業員を一時的に住まわせ、その後通常の物件として流通させるという「事故物件ロンダリング」が行われていました。これは、事件や事故の後に一度入居者を挟むことで告知義務を回避しようとする手法です。
しかし、最近ではインターネット上に事件や事故の現場情報がすぐに掲載されるため、検索することで過去の事故物件であるかどうかをある程度特定できるようになってきました。
また、不動産業界をサポートする宅地建物取引業協会も、会員である不動産業者に対し告知を徹底するよう指導しています。違反があった場合には、都道府県と連携して処分を行う対策も講じられています。このような取り組みのおかげで、事故物件ロンダリングはほとんど見られなくなり、現在では適切に告知されることが増えています。
告知義務のある物件とは、具体的にどのような物件を指すのでしょうか?一般的に「瑕疵物件=事故物件」とされ、これらには心理的瑕疵をはじめとする複数の種類があります。各種瑕疵について、告知義務が発生する可能性が高いといえます。以下に、心理的瑕疵以外の瑕疵について詳しく見ていきましょう。
物理的瑕疵とは、建物や土地そのものに存在する欠陥や不具合のことを指します。例として、雨漏りによる壁のひび割れや木材の腐食、シロアリ被害による建物の傾き、過去の火災による改修などが挙げられます。これらの物理的瑕疵は、通常は修繕工事で解消されることが期待されます。
環境的瑕疵とは、物件自体に直接的な欠陥がないものの、周囲の環境によって生活が影響を受ける場合を指します。たとえば、物件の近くに墓地や火葬場、遊戯施設がある場合などがこれに該当します。ただし、これらの環境条件は人によって感じ方が異なるため、判断が難しい場合があります。
法的瑕疵とは、建築基準法や都市計画法、消防法などの法的基準を満たしていないことを指します。例えば、建物の構造が安全基準を満たしていないものや、開発が認められていない土地に建てられた物件などがこれに該当します。法的瑕疵は、これらの法律が施行される前に建てられた中古物件に多く見られる傾向があります。
法的瑕疵の例として、「既存不適格物件」や「再建築不可物件」があります。既存不適格物件とは、建築時には法律の基準を満たしていたものの、その後の法律改正によって不適合となった物件です。一方、再建築不可物件は、法律が施行される前に建てられたか、違法に建てられた物件で、多くの場合は接道義務を満たしていないものを指します。
接道義務とは、建築基準法で定められた基準で、「建築物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接しなければならない」という規定です。また、農地や市街化調整区域にある物件は、再建築不可物件に該当するケースが多いです。
これらの既存不適格物件や再建築不可物件についても、適切に告知する義務があります。
告知義務のある瑕疵物件について、告知がいつまで行われなければならないのかを見ていきましょう。
告知の必要な事項が発生してから「いつまで」告知が必要かについては、ガイドラインに具体的な年数が記載されています。ただし、原因や取引の種類によって告知期間が異なる場合があります。
国土交通省のガイドラインによれば、人の死にまつわる事件や事故の告知について、賃貸住宅の場合、「原因となった死の発覚からおおむね3年が経過した場合は、原則として告知義務がない」としています。ここでの「原因となった死」とは、自然死や不慮の事故以外の死、または特殊清掃が必要な死を指します。ただし、事件性や周知性、社会的影響が高い場合には、3年を超えても告知義務が生じることがあります。
アパートやマンションの共用部分で発生した人の死に関する事件や事故については、「その共用部分が住み心地に影響を与える部分であれば、賃貸住宅と同様に扱う」とされています。これには、ベランダ、エントランス、エレベーター、廊下、階段などが含まれます。一方、日常生活で通常使用しない共用部分での死亡事故については、賃貸でも売買でも告知義務はありません。
売買取引に関しては、住宅内で発生した死亡に関する告知義務について、明確な期間は定められていません。事件性や周知性、社会的影響の高さによっては、長期間にわたって告知義務が発生することがあります。
告知にあたっては、亡くなった方の尊厳や遺族への配慮から、亡くなった方の氏名や具体的な死の態様、発見状況などを伝える必要はなく、事件の概要程度の説明となります。
自然死や不慮の事故による死亡について、ガイドラインでは賃貸借取引の場合、告知義務はないとされています。ただし、長期間発見が遅れ、特殊清掃や大規模リフォームが必要となった場合には告知義務があります。
高齢の一人暮らしの方が住宅内で亡くなり、発見が遅れた場合は、告知義務が発生する可能性があります。自然死でも、次の入居者によっては告知を希望する場合もあるでしょうが、全てを告知事項とするのは現実的には難しいです。
ガイドラインでは、「老衰や持病による自然死は予想されるものであり、自宅での死亡の9割は老衰や病死による」とされています。
また、共同住宅の上下や隣の部屋での事件や事故についても、ガイドラインでは告知義務はないとされていますが、事件性や周知性、社会的影響が大きい場合は告知が必要です。
人の死に関するもの以外にも、環境に関する告知事項があります。例えば、住民間のトラブルが繰り返される場合などです。ただし、不審な人がいる、騒音や臭気があるなどの問題は、事件にならない限り告知義務はありません。これらの説明範囲は、不動産会社の判断に任されています。
ガイドラインでは、不動産会社が告知義務を負うのは、通常の調査の中で告知すべき事項を知った場合です。調査過程で貸主や売主、管理業者からの情報やヒアリングで知った場合には、告知が必要です。しかし、不明な場合はその旨を告げることで、過失がなければ告知義務を果たしたとされます。
契約後、引渡し前に告知義務のある事実を知った場合も、借主や買主に告知する義務があります。
心理的瑕疵のある物件は、通常の相場よりも賃料や販売価格が安く設定されています。状況や物件の状態により、相場の2~3割、あるいは半額程度まで値引かれていることもあります。
例えば、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の賃貸住宅では、居住者が死亡した物件を「特別募集住宅」とし、入居後1~2年間家賃が割引される場合があります。このように、告知事項が明示されているケースもありますが、民間の賃貸物件や売買物件では明示されていないことも多いです。そのため、相場に比べて不自然に安い物件については、不動産会社に確認することが重要です。
賃貸物件や売買物件の情報に「告知事項あり」と記載されているのは、事故物件を見分けるポイントです。ただし、多くの場合、具体的な内容は記載されておらず、詳細は不明なことが多いです。不動産業者には物件の説明義務があるため、気になることがあれば直接質問することが大切です。
物件を探している段階や申し込み後に事故物件だと分かった場合、他の物件を探す人もいますが、気にしない人も一定数います。事故物件は相場よりも安く提供されるため、家賃や購入価格を抑えたい人にとっては魅力的かもしれません。
例えば、事件が起きた現場であっても、亡くなったのは病院だったり、自然死で発見が遅れただけの場合など、心理的負担を感じない人もいます。また、事故物件はリフォームされ、室内状態が改善されていることもあります。
現在、事故物件を投稿・検索できるサイトや、心理的瑕疵物件のみを紹介するサイトもありますので、気になる物件については確認してみると良いでしょう。
事故物件に住むことで必ずしも問題が起こるわけではありません。物件によっては利便性が高く、経済的に魅力的な場合もあります。ただし、事故物件を選ぶ際は、ネット上に住所が掲載されトラブルに巻き込まれる可能性や、入居後に心理的負担を感じる可能性があることを考慮する必要があります。
事故物件を避けたい場合は、新築物件を選ぶのも一つの方法です。新築であれば、自分が最初に住むことになるため、事故物件である心配はありません。費用面も考慮しながら、新築物件を検討することをお勧めします。
賃貸借契約や売買契約を結ぶ前には、必ず重要事項説明があります。このときに、事故物件の告知事項を含む気になる点を全て確認することが重要です。説明を担当する宅地建物取引士に、詳細をしっかりと確認するようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。
超高齢化社会の日本では死亡関連の告知事項が絡む物件は少なくなく、他の瑕疵等においても告知事項になることが多く、冒頭でも解説した通り、告知事項がない中古物件はほぼ無いと言っても良いでしょう。
しかし、告知事項に過度に恐れる必要はなく、あまり気にしない人にとっては安く物件を購入するチャンスもあるため、冷静になって、特に気にならない告知事項については受け入れる姿勢を持った方が良い物件に出会える可能性も上がるでしょう。
今回の記事を通じて、皆さんの中古物件購入のヒントになれば幸いです。
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