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契約不適合責任は、引渡し後に契約内容と異なる数量・品質、または状態が判明した際に、売主が買主に対して負う責任を指します。2020年4月の民法改正により、以前の「瑕疵担保責任」から名称が変更され、新たに「履行の追完請求」と「代金減額請求」が加わりました。
この記事では、契約不適合責任の詳細について説明します。契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い、および契約不適合責任への対処法も紹介しますので、不動産売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
契約不適合責任とは、契約内容に数量や品質、状態が適合していないことが判明した際に売主が買主に対して負う責任です。これは、契約内容に適合しているかどうかを基準に判断され、買主が気づいていたかどうかは関係ありません。例えば、建物の不具合や欠陥、土地の面積が契約で定めた大きさに満たない場合などが該当します。
売主が雨漏りなどの問題を説明し、買主がそれを承諾して購入した場合は、契約不適合責任は発生しません。買主が契約不適合責任を行使できるのは、不具合や欠陥を知ったときから1年以内です。
買主が売主に請求できる権利には以下の5つがあります。
追完請求とは、契約不適合がある場合に、売主に対して契約で合意された状態に物件を修繕するよう求める権利です。具体的には、買主が購入した物件に瑕疵(欠陥)が見つかった場合、その欠陥を修理し、契約に適合する状態にするよう売主に要求することを意味します。この権利は、買主にとって重要な保護手段です。例えば、雨漏りが発生している住宅を購入した場合、買主は売主に対して、雨漏りを修繕し、建物を契約通りの状態に戻すよう要求することができます。
追完請求を行うためには、買主が契約不適合の事実を知った時点から一定期間内に売主に対して通知する必要があります。この期間は通常1年とされていますが、具体的な期間は契約内容や適用される法律によって異なる場合があります。追完請求が認められるためには、買主が契約締結時にその瑕疵について知らなかったことが重要です。売主が修繕を拒否したり、適切な対応を怠った場合、買主はさらに代金減額請求や契約解除、損害賠償請求など他の権利を行使することができます。
追完請求は、物件の品質や状態が契約通りであることを確保するための基本的な手段であり、買主がその資産を安心して利用できるようにするための重要な権利です。売主がこの請求に応じることで、買主は契約に基づいた期待通りの物件を手に入れることができます。
代金減額請求とは、物件に契約不適合がある場合、買主が売主に対して契約価格の減額を求める権利です。これは、追完請求が不可能であったり、売主が修繕を行わなかった場合に適用されます。例えば、買主が購入した土地の面積が契約で示されたよりも小さかった場合、買主はその差分に相当する代金の減額を売主に請求することができます。この権利は、契約の本質を損なわない範囲で売主の負担を軽減しつつ、買主の利益を守るために設けられています。
代金減額請求を行うためには、まず買主が追完請求を試み、それが不可能であることを確認する必要があります。追完請求が実現できない理由には、修繕が技術的に困難である場合や、修繕コストが非常に高い場合などが含まれます。また、売主が修繕に応じない場合や、修繕後も完全に契約通りの状態に戻らない場合も、代金減額請求が適用されます。減額される代金は、瑕疵の程度や物件の市場価値に基づいて算出されます。
代金減額請求の手続きは、契約内容や適用される法律に従って行われます。買主はまず売主に通知し、具体的な減額額を提示する必要があります。売主がこれに応じない場合、買主は法的手段を取ることができます。代金減額請求は、買主が物件の瑕疵に対する補償を受け、支払った対価が公正であることを確保するための重要な手段です。
催告解除とは、契約不適合が発生した場合に、買主が売主に対して一定期間内に修繕や代替措置を行うよう求め、その期間内に対応がなされない場合に契約を解除する権利です。これは、契約の履行が期待できない状況に対して買主が最終的な救済手段として行使するものです。例えば、購入した建物に重大な欠陥が見つかり、売主が修繕を行わない場合、買主は契約の解除を求めることができます。
催告解除を行うためには、まず買主が売主に対して具体的な修繕や是正措置を求める通知を行い、その通知で合理的な期間を設定します。この期間は法律や契約内容によって異なりますが、一般的には1ヶ月程度が目安とされます。売主がこの期間内に適切な対応を行わなかった場合、買主は契約を解除することができます。この解除権は、売主が契約の本質的な部分を履行できない場合に特に重要です。
契約解除が成立すると、契約は遡及的に無効となり、当事者間のすべての権利義務が消滅します。買主は、支払った代金の返還を受ける権利を有し、売主は物件の返還を求めることができます。また、契約解除に伴う損害賠償を請求することも可能です。催告解除は、買主が契約不適合に対して最終的な救済を求めるための重要な手段であり、契約履行が期待できない場合の対処法として機能します。
催告解除は、契約の履行が期待できない場合に備えた買主の保護手段として、法的に認められています。これにより、買主は不適合な物件を保持し続けるリスクを避け、適切な補償を受けることができるのです。
無催告解除とは、契約の目的を達成できないと判断される場合に、買主が売主に催告することなく契約を解除する権利です。この権利は、契約の履行が不可能または著しく困難である場合に適用されます。例えば、購入した建物が重大な欠陥により使用不能であり、修繕が実質的に不可能な場合、買主は無催告で契約を解除することができます。
無催告解除は、契約の目的が完全に達成できない場合に限定されます。具体的には、物件が使用不能なほどの重大な欠陥がある場合や、契約違反が重大である場合に適用されます。このような場合、買主は売主に対して修繕や代替措置を求める必要がなく、直ちに契約を解除することが認められます。無催告解除が認められる条件は、法律や契約内容によって異なる場合がありますが、一般的には契約の目的が達成できないことが明確である場合に適用されます。
無催告解除が成立すると、契約は遡及的に無効となり、当事者間のすべての権利義務が消滅します。買主は支払った代金の返還を受ける権利を有し、売主は物件の返還を求めることができます。また、無催告解除に伴う損害賠償を請求することも可能です。この権利は、契約の履行が事実上不可能な場合に買主を保護するための重要な手段です。
無催告解除は、買主が重大な契約不履行に対して迅速かつ効果的に対応できるようにするための法的手段です。これにより、買主は不適合な物件を保持し続けるリスクを避け、迅速に適切な補償を受けることができます。
損害賠償請求とは、契約不適合により買主が損害を被った場合に、売主に対してその損害の補償を求める権利です。この請求は、物件の瑕疵が原因で買主に実際の損害が発生した場合に行使されます。例えば、購入した建物に重大な雨漏りがあり、その修理費用や住環境の悪化による損害が発生した場合、買主は売主に対して損害賠償を請求することができます。
損害賠償請求を行うためには、買主が損害を受けたことを証明する必要があります。損害には、直接的な修理費用だけでなく、間接的な損害や付随的な損害も含まれます。例えば、雨漏りによる家具や家電の損傷、住環境の悪化による生活の質の低下なども損害賠償の対象となります。損害の範囲や金額は、具体的な事実関係や契約内容に基づいて算出されます。
損害賠償請求は、買主が契約不適合に対して受けるべき補償を確保するための重要な手段です。売主が瑕疵を修繕しない場合や、修繕が不可能な場合でも、損害賠償を通じて買主は適切な補償を受けることができます。損害賠償請求の手続きは、まず売主に対して損害の発生を通知し、具体的な損害額を提示することから始まります。売主がこれに応じない場合、買主は法的手段を取ることができます。
損害賠償請求は、買主が契約不適合による損害を受けた場合に、その損害を補償するための重要な手段です。これにより、買主は契約の履行が不完全であっても、適切な補償を受けることができます。損害賠償請求は、買主の権利を守り、契約の公正な履行を確保するための基本的な手段となります。
契約不適合責任の対象となる瑕疵(不具合や欠陥)は、以下の4つに分類されます。
物理的瑕疵は、物理的な欠陥や不具合が存在する場合を指します。具体的には次のようなケースが含まれます。
法律的瑕疵は、建築基準法や都市計画法などの法令や自治体の条例に違反している場合を指します。
心理的瑕疵は、買主が安心して住むことができないような、心理的抵抗や嫌悪感を引き起こす状態を指します。
反社会的勢力の事務所が近くにある
ゴミ焼却施設が近くにある
隣地が墓地で、敷地から見える
自殺や他殺などがあった建物
事件性のある火事が発生した建物
共用部分で自殺があったことがある
長期間放置された孤独死があり、特別な清掃が必要だった部屋
環境的瑕疵は、不動産自体に欠陥がなくても、周辺環境に問題があり、買主が安心して暮らすことができない場合を指します。
以上のように、物理的、法律的、心理的、環境的な要因が契約不適合責任の対象となります。これらの瑕疵がある場合、売主は買主に対して責任を負うことになります。
中古物件は、個人が売主になるケースが多いため、新築物件とは異なるルールが適用されます。売買契約で特約を設定することもできます。
売買契約書に特約を設定し、「契約不適合責任について免除する」と事前に定めることが可能です。ただし、これにより買主に不利な条件になるため、相場よりも安い価格を設定する必要があります。
また、買取によって売却する場合でも、契約不適合責任を免除することが多いです。築年数が古い場合や不具合が心配な場合は、契約不適合責任について相談することがおすすめされます。
契約不適合責任に備えるための対策を4つ紹介します。費用がかかる対策もありますので必要に応じてご検討ください。
売主が不具合について説明し、買主が承諾して購入した場合は、契約不適合責任は発生しません。売買契約書や重要事項説明書、物件状況説明書で説明するようにしましょう。
建物が古く価値がない場合、土地値で売却することがあります。建物について契約不適合責任を免除すれば、建物に関する不具合などの責任を問われることはありません。
建物の不具合は住んでいてもわからない場合があります。築年数が古い場合などは、専門家へ建物診断(インスペクション)を依頼するのも一つの方法です。
インスペクションは義務ではありませんが、購入希望者は安心して購入することができるため、他の物件との差別化にもなります。費用は掛かりますが、安心して売却したい方におすすめです。
既存住宅売買瑕疵保険は、売却した建物に不具合や欠陥が見つかった場合に、補修費用が支払われる保険です。保証対象は建物の構造上主要な部分や、屋根など雨水の侵入を防止する部分に限られます。
仲介会社によっては、瑕疵に対する保証サービスを用意しているケースがあります。瑕疵に関する心配事も相談できますので、仲介会社を選ぶ際に保証サービスの有無を確認するとよいでしょう。
いかがでしたでしょうか。
契約不適合責任自体は普段は聞きなれない言葉ですが、きちんと理解していないと中古物件の購入の際にトラブルに巻き込まれることがあります。
一方で中古物件の売却の際にも売主として契約不適合責任を負う場合もあるので、売却の際の約定は注意した方が良いでしょう。
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鉄道を通じて地域の発展に貢献したいとの思いから、JR西日本に入社後、鉄道電気設備の維持・管理業務に携わる。
鉄道だけでなく幅広く地域の発展に貢献したいとの想いから、不動産の買取再販を行うこのびに参画。
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このびでは営業・リフォーム・販売の経験を持ち、現在は事業統括・推進を行っている。
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子育て真っ盛りの1児の父。趣味はキャンプ。